02
その選択は正しく、彰吾の刀にギィンと重い斬撃が落ちてきた。
「……っ」
「彰吾!」
「大丈夫です」
瞳を細め、ようやく回復してきた視界で遊士と彰吾は何が起きたのか目だけで確認する。
遊士の目の前には彰吾の広い背中。そして、彰吾の眼前には左頬に傷のある強面のお兄さん。
その手に握られた刀は彰吾の刀で受け止められている。
周囲に目をやればここが道場だと分かる。
数瞬前までいた自宅の道場と若干違うような印象を受けるが。
「てめぇ、何者だ?どこから入ってきた?」
視線を前に戻せば刀を振り下ろした状態で強面のお兄さんが彰吾を睨み付けて言った。
「何者と言われましても…」
彰吾も何か違和感を感じたのか言葉を詰まらせる。
このままじゃ埒があかなそうだと思った遊士は彰吾の後ろからひょっこり顔を出して口を開いた。
「Hey、とりあえず二人とも刀下ろせよ」
「もう一人いたのか!?」
「遊士様!出てこないで下さい!」
彰吾の背に庇われていたせいかどうやら気付かれていなかったらしい。
「Shit!オレはそんなにチビじゃねぇ」
遊士はそれが気に食わなかったのか悪態を吐いた。
すると、何故だか目の前の強面のお兄さんは驚いた顔をした。
何だ?、と眉を寄せいぶかしがる遊士と、慌てる彰吾。
強面のお兄さんは露になった遊士の顔を見つめてポツリと溢した。
「政宗様…?」
「は?」
妙な雰囲気に陥りそうになったその時、道場に新たな人物が現れた。
「Hey、小十郎!今日の鍛練はもう終わっちまったか?」
そう言ってドカドカと道場に入ってきた人物は右目に鍔の眼帯をしていた。
「ah?誰だコイツ等?」
そして遊士達に気付くと首を傾げた。
「それはオレが聞きたい」
新たに現れた人物に遊士はチラッと視線を送り、次に今だ刀を引かないお兄さんに向ける。
「ah〜、とりあえず刀下ろせ。小十郎」
「なりませぬ。何処の誰だか分からぬ者を目の前にして、しかも二人とも刀を所持している身」
遊士はあ!、と声を上げ、それもそうか、と言って手にしていた二本の刀を腰に差していた鞘に納めた。だが、それに慌てたのは彰吾である。
「遊士様!?なぜ刀をしまうんです!それはこちらにも言えることですよ!」
「大丈夫。少なくともそっちの眼帯つけた兄さんは信用できる。それに万が一何かあっても彰吾が守ってくれるだろ?」
「当たり前です」
きっぱりと断言した彰吾に遊士は笑みを浮かべた。
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